福利厚生のアウトソーシングとは?メリット・デメリットなどを解説
福利厚生の充実は、従業員満足度の向上や優秀な人材の確保に欠かせない要素となっています。特に近年は、働き方や従業員ニーズの多様化により、福利厚生に求められる内容も幅広くなっています。しかし、すべてを自社で対応しようとすると、担当者の負担が大きくなり、手が回らなくなることもあるでしょう。こうした背景から、専門企業に運用を委託する福利厚生のアウトソーシングが今、注目を集めています。
この記事では、福利厚生アウトソーシングの概要や種類、導入するメリット・デメリット、成功させるためのポイントについて解説します。
福利厚生のアウトソーシングとは?
福利厚生のアウトソーシングとは、福利厚生制度の企画や運用、管理業務を、外部の専門企業に委託する仕組みのことです。
委託の対象となるのは、健康保険・厚生年金保険といった法律によって企業への導入が義務付けられている「法定福利厚生」ではなく、企業が独自に定めるレジャー支援や健康支援などの「法定外福利厚生」が中心となります。
これまでは、こうした法定外福利厚生の運用は自社で行うケースが多く、総務の担当者などが制度の企画から手続き管理までを対応するのが一般的でした。しかし、対応業務の煩雑化や従業員ニーズの多様化にともない、アウトソーシングを選択する企業が増えています。
福利厚生アウトソーシングサービスの種類
福利厚生アウトソーシングサービスには、大きく分けて3つの種類があります。それぞれの特徴を正しく理解したうえで、自社に合ったものを選ぶことが大切です。
■福利厚生アウトソーシングサービスの比較表
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| コスト(費用対効果) | 柔軟性・独自性 | 従業員満足度 | 導入の手軽さ | |
|---|---|---|---|---|
| パッケージ型 | △(固定費の無駄が発生しやすい) | ×(既存メニュー中心のため、独自設計には制約がある) | △(従業員の自己負担が発生) | ◯(スピーディーに導入可能) |
| カフェテリアプラン型 | ◯(固定費はかかるが予算調整しやすい) | ◯(目的に沿った設計が可能) | ◯(多様なニーズに対応) | △(設計に多少時間を要する) |
| 特化型 | ◯(特定分野のみなので予算調整しやすい) | △(特定分野のみの補強) | ◯(対象者から評価されやすい) | △(細かなすり合わせが必要) |
パッケージ型
パッケージ型は、専門企業があらかじめ用意した多彩なサービスを、定額料金でまとめて導入できる方式です。従業員は、グルメやレジャー、スポーツ、育児支援など、幅広いメニューの中から、自分が使いたいサービスを割引価格で利用できます。
制度設計にかかる手間が少なく、契約後に比較的短期間でサービスを導入できる点が強みです。これから福利厚生を充実させたい企業や、管理の手間を抑えながら多彩なサービスを提供したい中小企業に向いています。
ただし、既存のプランをそのまま利用する形になるため、自社独自の制度設計はしにくく、他社との差別化を図りたい企業には物足りなさを感じる場合もあるでしょう。また、定額制のため、従業員の利用状況によっては、費用対効果が見合わない場合もあります。
カフェテリアプラン型
カフェテリアプラン型は、企業が対象となる従業員に、平等に一定のポイントを支給し、そのポイントの範囲内で好きなメニューを選んで利用してもらう方式です。
従業員一人ひとりの多様なライフスタイルやニーズに応えられるため、満足度を高めやすい仕組みといえます。また、既存の自社制度と専門企業のサービスを組み合わせれば、独自性の高い福利厚生を柔軟に設計できます。固定費はかかるものの、支給ポイント数の調整によって予算をコントロールしやすいため、中小企業から大企業まで規模を問わず導入しやすい点も魅力です。
カフェテリアプラン型のサービス例として、株式会社ベネフィット・ワンが提供する「ベネフィット・ステーション」があります。グルメやレジャー、ショッピング、スポーツ、健康、引越しサービスなど、充実した福利厚生メニューを従業員に提供したい企業におすすめのサービスです。
▶カフェテリアプランについては以下の記事もご参照下さい
特化型
特化型とは、特定分野の福利厚生を外部に委託する方式です。代表例として、社員食堂の運営委託、健康管理業務の代行、社宅管理の代行などがあります。充実させたい領域や、現在の制度で不足している部分だけをピンポイントで補強できるため、予算を調整しやすい点がメリットです。
すでに自社で一定の福利厚生制度が整っている企業が、特定のサービスだけを専門企業に任せたい場合に適しています。専門企業のノウハウを活かせるため、対象となる従業員から特に評価されやすいサービスを提供できるでしょう。ただし、内容によっては、専門企業との細かなすり合わせが発生しやすく、導入・運用時には一定のコミュニケーションコストがかかる点には注意が必要です。
福利厚生をアウトソーシングするメリット

福利厚生のアウトソーシングには、自社で福利厚生を運営する場合には得られないさまざまなメリットがあります。ここでは、代表的な5つのメリットを紹介します。
社内担当者の業務負担が軽減する
福利厚生のアウトソーシングにより、利用申請の受付や各種精算、従業員からの問い合わせ対応といった日々の事務作業を専門企業に任せることができます。
社内の担当者が福利厚生の運用業務だけに追われることなく、本来注力すべきコア業務に集中できる点は大きなメリットです。また、特定の担当者だけが業務を把握しているという属人化も防げます。業務の進め方が標準化されることで、手続きの遅延やミスの防止にもつながるでしょう。
福利厚生に関する運用・管理コストが削減される
福利厚生のアウトソーシングにより、福利厚生に関する運用・管理コストの削減が期待できる点もメリットのひとつです。例えば、自社で保養所などの施設を保有したり、福利厚生の申請や利用状況を管理するための専用システムを構築・維持したりするためのコストをカットできます。また、多くの会員を抱える専門企業のスケールメリットを活かすことで、従業員1人あたりの利用単価を抑えやすい場合もあります。
さらに、専門知識のない状態で自社運用を行った際に生じがちな、無駄なコストの発生を防ぐことも可能です。専門企業のシステムや運用ノウハウを活用すれば、無駄な支出を抑えながら質の高い制度が維持できるでしょう。
従業員満足度が向上する
福利厚生のアウトソーシングを活用すれば、旅行や自己啓発、育児支援など、自社だけでは整備しきれない多様なサービスを従業員に提供でき、結果、従業員満足度の向上が期待できます。中小企業であっても、外部サービスを活用することで、自社単独では整備しにくい幅広い福利厚生を提供しやすくなるため、働く環境に対する評価が高まりやすくなるでしょう。
充実した福利厚生によって会社への愛着や仕事へのモチベーションが高まれば、離職防止や定着率の向上にもつながります。また、採用活動においても、福利厚生の充実は求職者にとって魅力的な条件となり、採用競争力の強化に貢献します。
専門的ノウハウを活用できる
福利厚生に特化した専門企業が持つ豊富な運用実績や知見を、自社の制度構築にそのまま活かせることも、福利厚生のアウトソーシングのメリットです。頻繁に改正される労働関連の法律や税制についても、最新情報をもとにアドバイスしてくれる場合もあるため、コンプライアンス面でも安心です。
サービスによっては、利用状況のデータ分析をもとにした改善提案など、専門的な視点からのコンサルティングを受けられる場合もあります。社内に福利厚生の知見がない企業でも、高水準の制度運用が実現可能です。
多様なニーズに対応できる
カフェテリアプラン型の福利厚生のように、幅広い選択肢を用意すれば、年齢層や家族構成が異なる従業員一人ひとりのニーズに柔軟に応えられます。特定の層だけが恩恵を受けるのではなく、個人が望むサービスが利用できるので、社内での不公平感が生じにくい点もメリットといえるでしょう。
また、リモートワークの普及など、時代とともに変化する新しい働き方にも対応したサービスをスピーディーに導入できます。アウトソーシングサービスの豊富なメニューを活用することは、福利厚生の質と幅を広げるうえで有効な手段となります。
福利厚生をアウトソーシングするデメリット
福利厚生のアウトソーシングにはいくつかのデメリットもあります。導入を検討する際にこれから紹介するデメリットを把握しておくことも大切です。
制度設計の手間がかかる
自社の目的に合わせたメニューの選定やルールの構築には、一定の時間と労力を要する場合があります。特に、すでに独自の福利厚生制度を運用している場合は、新しいサービスへの移行手続きや社内調整が煩雑になりやすい点に注意しましょう。また、税務上の取り扱いや補助の適用範囲について、社内規定や利用条件などをしっかりと整えておく必要もあります。
企業文化に合わない場合がある
福利厚生のアウトソーシングは、あらかじめ用意された汎用的なサービスを利用するため、自社ならではの特色や独自性を打ち出しにくい場合があります。他社で成功した福利厚生のパターンであっても、自社の社風や組織の実態に合わないリスクがある点にも注意しましょう。
費用対効果が見合わない場合がある
導入したサービスと従業員の実際のニーズにずれがあると、利用率が伸びず、想定していた効果と釣り合わないおそれがあります。例えば、宿泊施設やスポーツクラブの利用といったパッケージプランの優待は、使う際に自己負担が発生するので、従業員が利用をためらってしまうこともあるでしょう。
福利厚生のアウトソーシングを成功させるポイント
福利厚生のアウトソーシングを最大限に活用するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、導入を成功に導くためのポイントを解説します。
従業員ニーズを明確にする
福利厚生のアウトソーシングを検討する前には、社内でアンケートや聞き取り調査を行い、従業員が本当に必要としている福利厚生を把握することが重要です。現在の制度への不満や自社の課題を洗い出し、アウトソーシングで何を解決したいのかという目的をあらかじめ設定しておきましょう。
若い世代が多いのか、子育て世代が多いのかなど、従業員の属性を考慮してサービスを選ぶことで、利用率の高い制度を構築しやすくなります。ニーズの把握が不十分なままサービスを選定してしまうと、導入しても活用されないといった事態を招くおそれがあります。
複数のサービスを比較する
1社に即決するのではなく、提供されるメニューの内容や料金体系を複数社でしっかりと比較検討することも大切です。導入企業数や会員数といった実績も確認し、スケールメリットがあり安定した運用が期待できるサービスを選びましょう。
また、導入から運用まで、トラブル対応や定期的な見直しのサポート体制が充実しているかも事前に確認しておくことをおすすめします。
従業員への周知を図る
新たな福利厚生サービスを導入する際は、導入する目的や、従業員自身にとってのメリットなどをわかりやすく周知し、社内の理解を得ることも不可欠です。また、問い合わせ窓口といった、気軽に質問できるサポート体制を整えておけば、制度の形骸化や利用の偏りを防ぐことができます。
導入後も改善を行う
制度を導入したあとは、実際の利用状況を分析して効果測定を実施することも重要です。従業員から定期的に意見を集め、サービスの改善や追加に役立てていきましょう。
あまり利用されていないサービスがあれば、利用を促すアナウンスをあらためて行ったり、別のプランへの変更を検討したりすることも大切です。改善を繰り返すことで、中長期にわたって高い効果を発揮する福利厚生が維持できます。
まとめ
- 福利厚生のアウトソーシングとは、法定外福利厚生の企画・運用・管理を外部の専門企業に委託する仕組みを指す
- 福利厚生のアウトソーシングには、「パッケージ型」「カフェテリアプラン型」「特化型」の3種類がある
- 福利厚生のアウトソーシングには、担当者の業務負担軽減やコスト削減、従業員満足度の向上、専門ノウハウの活用、多様なニーズへの対応といったメリットがある
- 福利厚生のアウトソーシングには、制度設計の手間がかかる点や、企業文化に合わない場合がある点、費用対効果が見合わない可能性がある点に注意が必要である
- 福利厚生のアウトソーシングを成功させるためには、従業員ニーズの把握や複数サービスの比較検討、社内への周知、導入後の継続的な改善を意識することが大切である
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税理士登録後、税理士法人V-Spiritsグループの創設メンバーとして参画。著書に『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’22~’23年版』(成美堂出版)がある。