福利厚生を見直そう!従業員が求めるサービスを第一生命の調査で確認

福利厚生を見直そう!従業員が求めるサービスを第一生命の調査で確認
福利厚生を見直そう!従業員が求めるサービスを第一生命の調査で確認

従業員のモチベーションや定着率につながる「福利厚生制度」は、単なる付加サービスではなく、経営戦略の一環として重要な役割を担っています。人的資本経営や従業員エンゲージメントへの注目が高まる中、今一度、自社の福利厚生を見直してみてはいかがでしょうか。
特に近年は、働き方の多様化や物価上昇、育児・介護などライフステージの変化により、従業員ニーズも大きく変化しています。

この記事では、第一生命グループが毎年実施している、福利厚生に関する調査結果をもとに、今どのような福利厚生が求められているのか、企業としてどう対応すべきかを解説します。

目次

福利厚生を見直す目的

福利厚生を見直す目的は、従業員の働きがいやエンゲージメントを高め、組織の生産性や定着率を向上させることです。昨今注目されている「人的資本経営」では、従業員の健康や成長を支える仕組みとして福利厚生が重視されており、その整備が経営戦略の一部となっています。

また、福利厚生の内容や活用状況は、上場企業を中心に「人的資本開示」としての報告が求められており、非上場企業でも信頼性や採用力の向上を目的に開示へ取り組む動きが見られます。こうした流れを踏まえると、福利厚生制度は企業の魅力づけや社会的評価にも関わる重要な要素です。

福利厚生制度の見直しは、従業員満足と企業価値の両面を高める戦略的な施策といえるでしょう。

人的資本経営については、以下の記事をご参照ください。

福利厚生を見直すべき理由

働き方や社会環境が急速に変化する中で、従来の福利厚生制度が時代に合わなくなりつつあります。見直しを怠れば、従業員満足の低下や無駄なコストの発生につながりかねません。
ここでは、制度を見直すべき主な理由を3つ紹介します。

働き方の多様化と従業員ニーズの変化

福利厚生を見直すべき理由のひとつは、働き方の多様化とそれに伴う従業員ニーズの変化です。
近年、テレワークの常態化、副業制度の導入、さらには育児や介護との両立支援など、企業を取り巻く労働環境は大きく変化しています。
こうした中で、従業員が求める福利厚生も従来とは大きく異なってきています。しかし現状では、依然として画一的な設計の制度が多く、実際のニーズと乖離しているケースが少なくありません。その結果、制度が活用されず、従業員の満足度にもつながっていないという課題が浮き彫りになっています。

働き方の多様化が進む今、福利厚生の柔軟性と実効性を見直すことが求められています。

福利厚生制度の活用状況と費用対効果の見えにくさ

福利厚生を見直すべき理由として、制度が十分に活用されていないことにより、効果が見えにくくなっている点も大きな要因です。
多くの企業では、福利厚生制度が従業員に十分に周知されていなかったり、使いづらい設計になっていたりすることがあります。

実際に、制度の内容を把握していない従業員や、自分が利用できる制度だと認識していない従業員が一定数いる場合、福利厚生制度は十分に機能しません。その結果、どの制度が従業員満足度の向上や定着につながっているのかを把握しづらくなり、企業側から見ても費用対効果を判断しにくい状況が生じます。

このようなギャップが続けば、従業員の満足度が高まらないばかりか、経営資源の無駄遣いにもつながります。福利厚生を目的どおりに機能させるためにも、利用実態とコストのバランスを定期的に見直す必要があります。

なお、制度を形骸化させず有効に活用している企業では、以下のような工夫が見られます。

  • ポータルサイトやチャットツールでの定期的なリマインド
  • ライフイベント(結婚・育児等)に合わせた個別の制度案内
  • スマホから簡単に申請できるシステムの導入

こうした「届け方の工夫」も検討するとよいでしょう。

法改正・社会情勢の変化への対応

福利厚生を見直すべき理由として、法改正や社会情勢の変化への対応も重要です。
働き方改革関連法の施行や物価上昇などの影響を受け、従来の制度では対応しきれない課題が増えています。
たとえば、テレワークの定着に伴う通信費補助や、育児・介護支援の強化などは早急な対応が求められています。このほか、物価上昇に対応した住宅手当・食事補助の増額も検討対象となるでしょう。
こうした変化に柔軟に対応することで、従業員の安心感を高め、企業の信頼性も向上します。

従業員が求める福利厚生とは?

福利厚生の見直しには、企業側の意図だけでなく、従業員の実際のニーズを把握することが欠かせません。
使われない制度では効果も薄くなります。ここでは、第一生命グループや「いちラボ」での調査結果をもとに、企業が見直しを検討している制度や、従業員が求めている具体的な福利厚生の傾向を紹介します。

企業が見直しを検討している福利厚生制度

第一生命が調査した「2024年度 福利厚生に関する実態調査」によると、福利厚生を見直す動きとして多くの企業が関心を寄せているのが、「介護相談・補助」(22.3%)、「有償福利厚生パッケージ(割引クーポン等)」(21.9%)、「自己啓発支援(通信教育等)」(20.0%)の3項目です。

■企業が見直しを検討している福利厚生制度

企業が見直しを検討している福利厚生制度

これらは従業員の生活支援や成長支援に直結する内容であり、企業が多様化する従業員ニーズに対応しようとしていることがうかがえます。

従業員が不足に感じている制度

同じく、第一生命が調査した「2024年度 福利厚生に関する実態調査」によると、従業員が支援制度として最も不足を感じているのは「育児・介護支援」(33.6%)で、次いで「住宅・通勤関連」(29.5%)、「テレワーク環境関連」(24.7%)となっています。

■従業員が不足に感じている制度

従業員が不足に感じている制度

これらはいずれも、働く環境や生活基盤に深く関わる制度であり、整備の有無が職場への満足度や離職率に直結する可能性があります。
従業員の実感に寄り添った制度設計が、定着率やエンゲージメント向上に不可欠です。

在職者が求める福利厚生制度

福利厚生ランキング

「いちラボ」が独自に実施したアンケートによると、在職者が導入を希望する福利厚生制度の1位は「特別休暇」(26.0%)、2位が「家賃補助・住宅手当」(25.4%)、3位は「定年退職後の医療保障」(18.1%)でした。
特別休暇はリフレッシュやボランティアなど、ワーク・ライフ・バランスへの関心の高まりを反映したものです。また、物価高騰による住宅費負担の軽減、老後への備えとしての医療保障も重視されています。休暇と生活支援に対するニーズの高さがうかがえます。

福利厚生見直しの進め方【4ステップ】

従業員ニーズや社会環境の変化を踏まえ、福利厚生制度を効果的に見直すには、段階的かつ計画的なプロセスが欠かせません。
ここでは、制度の現状把握から効果測定まで、見直しを成功させるための4つのステップを紹介します。

(1)現状の制度と利用実績を評価する

福利厚生制度を見直す第一歩は、自社が現在どのような制度を導入しているかを正確に把握することです。
制度ごとの利用率や従業員の満足度、コスト負担を定量的に評価することで、改善の優先順位が見えてきます。
特に利用率が極端に低い制度については、設計や導入目的を再確認し、実態と乖離していないかを見極めることが重要です。

(2)従業員の声・ニーズを把握する

福利厚生制度の主な利用者である従業員の声を正確に把握することは、見直しにおいて不可欠です。
アンケートやヒアリングなど、複数の手法を組み合わせることで、表面化しにくい不満や潜在的なニーズを掘り起こせます。実際の声を反映させることで、利用される制度づくりにつながります。

(3)見直し案を立案し、優先度を決める

アンケートなどで収集したデータと経営戦略をすり合わせながら、実現可能な福利厚生の改善案を立案します。
一度にすべてを変えるのではなく、費用対効果や影響の大きさを考慮し、段階的な導入や対象範囲の限定など、実行可能性を意識した優先順位づけが重要です。段階的に進めることで、無理なく制度を定着させることができます。

(4)新制度導入と効果測定を行う

新たな福利厚生制度を導入した後は、導入して終わりにせず、定期的なモニタリングと効果測定を行うことが重要です。
利用率や従業員の反応を継続的に確認し、必要に応じて内容や運用方法を見直すことで、制度の実効性を高められます。柔軟な改善を重ねることで、制度は組織に根づいていきます。

福利厚生を見直す際の注意点

福利厚生の見直しは、従業員満足の向上や企業価値の強化に直結する一方で、進め方を誤ると不公平感や混乱を招くおそれもあります。
ここでは、見直し時に注意すべき3つのポイントを解説します。

公平性・法的リスクへの配慮

福利厚生制度の見直しでは、対象者や制度内容に偏りが生じないよう注意が必要です。
特定の年齢層や雇用形態にのみ有利な制度は、不公平感や社内トラブルの原因となる可能性があります。また、就業規則の変更や雇用契約に関わる場合は、労働基準法などに抵触しないよう、専門家の助言を得ながら法的リスクへの対応を行うことが重要です。

コストと効果のバランスを取る

限られた予算の中で福利厚生制度を充実させるには、コストと効果のバランスを意識することが不可欠です。
導入や維持にかかる費用だけでなく、制度が従業員に与える満足度やエンゲージメント向上への影響も踏まえ、費用対効果の高い制度に優先的に投資しましょう。

従業員との丁寧なコミュニケーション

福利厚生制度の見直しや変更を行う際は、従業員への丁寧な説明と対話を心がけましょう。
一方的な通知では不信感や反発を招くおそれがあるため、制度変更の背景や目的を明確に伝えるとともに、必要に応じて意見を募る場を設けることが大切です。また、福利厚生制度の一部を縮小したり廃止したりする場合には、不利益変更に該当する場合もあるため、労働基準法の観点からも慎重な対応が必要です。
透明性のあるプロセスが、制度への理解と納得感を高め、スムーズな導入につながります。

福利厚生見直しのヒント:サイボウズの取り組みに学ぶ

福利厚生制度の見直しを進める上では、制度の中身だけでなく、「どうすれば従業員が働きやすくなるか」という視点から柔軟に考えることが重要です。

たとえばサイボウズ株式会社では、かつて「100人いれば100通りの働き方」という考え方のもと、多様な働き方の選択肢を導入しました。副業・複業の許可、在宅勤務の柔軟化、選択型の勤務時間などを取り入れた結果、当時28%を超えていた離職率は一桁台にまで改善しました。

現在ではさらに進化し、「100人100通りのマッチング」という考え方へと転換。会社の都合だけで制度を画一的に整えるのではなく、社員一人ひとりの状況や希望に応じて柔軟に対応する姿勢を重視しています。

福利厚生を「整備すべき制度」としてではなく、組織課題の解決に向けた柔軟な手段として設計する――。
この発想は、制度の形骸化や運用の停滞に課題を抱える企業にとって、大きな示唆を与える事例といえるでしょう。

※参考:内閣府「100人いれば100通りの働き方 サイボウズのワークスタイル変革」、サイボウズ株式会社「サイボウズは「100人100通りの働き方」をやめます。社員数1000人を超えても、成長と幸福を両立させるための挑戦

まとめ

  • 福利厚生は人的資本経営の土台として、従業員の働きがいや定着率に大きく影響する
  • 第一生命の調査によると、在職者の多くが育児・介護支援、住宅手当、特別休暇の導入・拡充を求めている
  • 福利厚生制度の見直しは、現状把握から導入・効果測定までの段階的なプロセスが重要
監修
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渋田貴正(しぶた たかまさ) 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士の4つの資格を保有。上級相続診断士®。富山県生まれ。東京大学経済学部卒。大学卒業後、大手食品メーカーや外資系専門商社にて財務・経理担当として勤務。在職中に税理士、司法書士、社会保険労務士の資格を取得。2012年に独立し、司法書士事務所開設。
税理士登録後、税理士法人V-Spiritsグループの創設メンバーとして参画。著書に『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’22~’23年版』(成美堂出版)がある。

    
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