社員の離職を防止するには?離職防止に効果的な対策8選
社員の定着は、企業が持続的に成長していくうえで欠かせない経営課題のひとつです。しかし近年、働き方への意識の変化やキャリアの多様化が進み、入社まもない若手から経験豊富なベテランまで、さまざまな理由で離職が選択されています。「どうすれば社員の離職を防止できるのか」と頭を悩ませている人事担当者・総務担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、社員が離職してしまう主な原因に加え、対策を怠ることで生じるリスクや離職防止に効果的な8つの対策、年代・男女別の傾向についても解説します。
社員が離職してしまう原因
社員が離職を決意する背景には、さまざまな原因があります。ここでは、代表的な離職原因を6つ紹介します。
労働条件、待遇への不満
労働条件や待遇への不満は、離職を招く原因のひとつです。
長時間労働や慢性的な残業が常態化している職場では、十分な休息が取れず、心身の疲れが蓄積されます。また、給与・賞与が他社や業界水準に比べて低い場合、あるいは努力や成果に見合った評価・報酬が得られていないと感じる場合も、離職につながりやすいといえるでしょう。
育児や介護
育児や介護などのライフイベントに直面した際、テレワークや時短勤務といった柔軟な働き方を選べる環境が整っていないと、仕事との両立を断念せざるを得なくなります。育児・介護の支援制度が不十分だったり、相談できる窓口がなかったりする職場では、働き続けることへの不安から退職を選択するケースも少なくありません。
2024年に改正され、2025年4月・10月に段階的に施行された育児・介護休業法により、介護離職防止のための雇用環境整備や、子の年齢に応じた柔軟な働き方のための措置などが事業主に義務付けられています。しかし、たとえ制度自体は整っていても、周囲の理解が不足して利用しづらい雰囲気があると、一人で負担を抱え込んだ末に離職へとつながる場合もあります。
職場の雰囲気や人間関係への不満
職場の雰囲気や人間関係は、社員が働き続けるモチベーションに大きく影響します。
自分の意見が言えない、あるいは発言しても尊重されないなど、風通しの悪い社風に息苦しさを感じ、離職を選ぶ社員も少なくありません。また、上司や同僚・部下との関係がうまくいかず、孤立感や疎外感を抱えながら日々の業務にあたっていると、精神的な負担が積み重なり、離職に至ることもあるでしょう。
ハラスメント
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントなどが横行する職場では、精神的に追い詰められた社員が離職を余儀なくされるケースがあります。
例えば、管理職のマネジメント知識が不足していると、本人は指導のつもりでも、無自覚なハラスメントになってしまっていることも珍しくありません。企業としての対策が不十分で相談窓口も整備されていない環境では、問題を一人で抱え込んだまま退職を選ぶ社員が出てしまうリスクもあります。
▶ハラスメントの事例については以下の記事もご参照ください
仕事内容への不満
単調なルーティンワークばかりを任され、仕事にやりがいや達成感を感じられない状況では、モチベーションを維持するのが難しくなります。自身のスキルや経験を活かせるポジションに就けず、理想と現実のギャップに苦しむケースもあります。
また、一人の社員に過剰な業務量や重すぎる責任がのしかかり、それに見合った評価も得られないとなれば、疲弊感や不公平感が募り、離職の引き金となることもあるでしょう。
将来への不安
会社の業績が不安定で成長が見込めないと感じたり、評価基準が曖昧で昇進の機会が少なく、収入アップも期待できない状況が続いたりすると、社員は将来への不安を抱き、離職につながる場合もあります。
また、上司や人事にキャリアプランを相談する機会がなく、スキルアップできる環境も整っていない職場では、「このまま働き続けても成長できない」と感じ、離職を決意するケースが見られます。
社員の離職防止対策を行わないことで生じるリスク
離職防止への取り組みを怠ると、企業にはさまざまなリスクが生じます。短期的なコスト増加にとどまらず、組織の競争力そのものが低下しかねません。
<離職防止を行わないことで生じるリスクの例>
- 優秀な人材の流出
- 既存社員への業務負担の増加
- 人材の採用・教育にかかったコストの損失
- 企業イメージの低下
社員の離職防止に効果的な対策8選
離職防止の取り組みは多岐にわたります。まずは、自社が抱える課題に合った対策から着手することが大切です。ここでは、離職防止に効果的な8つの施策を解説します。
■社員の離職防止に効果的な対策の比較
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| 解消が見込める離職原因 | アクション例 | コスト | 期間 | |
|---|---|---|---|---|
| 1on1などの現状把握 | ・仕事内容への不満 ・職場の雰囲気や人間関係への不満 ・将来への不安 |
管理職への1on1研修の実施 | 3万~数十万円/回 | 半日~1日 |
| エンゲージメントサーベイツール導入 | 80万~120万円/年 | - | ||
| 人事評価制度の見直し | ・労働条件、待遇への不満 ・仕事内容への不満 ・将来への不安 |
人事評価支援ツールの導入 | 6万~15万円/月 | - |
| 社労士への就業規則改定依頼 | 15万~30万円 | 2~3ヵ月 | ||
| 労働条件の見直し | ・労働条件、待遇への不満 | 勤怠管理システムの導入 | 1万~5万円/月 | - |
| 社労士への就業規則改定依頼 | 15万~30万円 | 2~3ヵ月 | ||
| ハラスメント対策の実施 | ・ハラスメント ・職場の雰囲気や人間関係への不満 |
ハラスメント研修の実施 | 数万~数十万円/回 | 半日~1日 |
| 内部通報の社外窓口の設置 | 15万~70万円/年 | - | ||
| キャリアアップ支援などの充実 | ・仕事内容への不満 ・将来への不安 |
キャリアデザイン研修の実施 | 10万~50万円/回 | 半日~1日 |
| 社内コミュニケーションの活性化 | ・職場の雰囲気や人間関係への不満 | 社内イベントの実施 | 5,000~3万円/人 | 半年~1年 |
| 社内SNSの導入 | 10万~50万円/月 | - | ||
| ワークライフバランスを考慮した制度導入 | ・労働条件、待遇への不満 ・育児や介護 |
テレワークの導入 | 数十万円/人 | 3~6ヵ月 |
| 社労士への就業規則改定依頼 | 15万~30万円 | 2~3ヵ月 | ||
| 福利厚生の充実 | ・労働条件、待遇への不満 ・将来への不安 |
福利厚生アウトソーシングサービスの導入 | 300~3,000円/月 (従業員一人あたり) |
- |
| 社労士への就業規則改定依頼 | 15万~30万円 | 2~3ヵ月 |
※コスト・期間は一般的な目安です。企業規模や導入範囲、利用サービスによって変動します。
1on1や退職者へのヒアリングによって現状を把握する
離職防止の第一歩は、現状を正確に把握することです。
定期的な1on1ミーティングを実施することで、部下が抱える悩みやキャリアへの希望をいち早くキャッチできます。また、退職が決定した社員に対しても、慰留目的ではない旨を伝えたうえで、可能であれば本当の退職理由をヒアリングすることが大切です。
収集した意見は分析したうえで、組織が抱える根本的な課題の解決につながる改善策に落とし込みましょう。エンゲージメントサーベイツールやストレスチェックの活用も有効で、アラートが出た社員に対して迅速なケアを行うことで、離職リスクの早期把握や対応につながります。
▶ストレスチェックについては以下の記事もご参照ください
人事評価制度を見直す
評価基準が不明確だと、社員は自分の努力が正当に評価されていないと感じ、不満や不信感を抱きやすくなります。そのため、誰もが納得できる、客観的で透明性の高い人事評価制度を構築することが大切です。
成果や努力が給与・昇進にきちんと反映される仕組みを整えれば、社員のモチベーション向上にもつながります。直属の上司だけでなく、同僚や部下の視点も取り入れた360度評価の導入も効果的です。また、人事評価支援ツールを活用すれば、公平性を高めながら運用コストの削減も図れます。
労働条件を見直す
長時間労働の常態化は、社員の心身の健康を損ない、離職の大きな原因となります。こうした事態を防ぐためには、定期的に業務の棚卸しを行い、特定の社員に業務が集中する状況を解消することが必要です。
勤怠管理システムを導入して労働時間を可視化すれば、残業が続く社員への早期対応が可能になります。
ハラスメント対策を行う
ハラスメントによる離職を防ぐためには、あらゆるハラスメントを許さないという明確な方針を掲げ、全社員に周知することが大切です。
また、定期的にハラスメント研修を実施し、無自覚なハラスメントの防止と適切な指導方法の習得を促しましょう。さらに、トラブルが発生したときや悩みを抱えたときに社員が安心して相談できる窓口を設置することも、ハラスメントの抑止力向上につながります。
▶ハラスメント研修については以下の記事もご参照ください
キャリアアップ支援や研修を充実させる
社員が将来のビジョンを描けるよう、定期的な面談を通じて成長の道筋を明確に示すことも、離職防止対策のひとつです。
また、職種や階層ごとに必要なスキルを習得できる実践的な研修プログラムを用意し、学習の機会を提供する方法もあります。社内公募制度やジョブローテーションを取り入れ、現在の部署にとどまらず新たな領域に挑戦できる選択肢を設けることも、成長意欲を高める有効な手段となります。
社内コミュニケーションを活性化させる
心理的安全性が高く、誰もが意見を言いやすい職場環境を整えることが、社員の帰属意識を高め、「ここで働き続けたい」という気持ちを育みます。
例えば、部署や役職の垣根を越えて交流できるよう、社内イベントやランチミーティングなどを定期的に開催すれば、良好な人間関係の構築につながるでしょう。フリーアドレス制の導入や社内SNSの活用により、業務外でも気軽に雑談が生まれやすい環境を整備することも大切です。
ワークライフバランスを考慮した制度を導入する
ワークライフバランスを考慮した制度の導入も、離職防止に効果的です。
社員が気兼ねなく有給休暇を取得できる職場環境を整えることが、十分な休息の確保につながります。また、社員一人ひとりの事情に合わせて柔軟に働けるよう、テレワークや時短勤務、フレックスタイム制といった制度を取り入れることも大切です。さらに、育児や介護などのライフイベントに直面した際も、キャリアをあきらめずに働き続けられるサポート体制の構築が、長期的な人材定着を支えます。
▶ワークライフバランスについては以下の記事もご参照ください
福利厚生を充実させる
福利厚生を充実させることで、社員が安心して長く働ける職場環境が作れます。福利厚生の充実は、賃上げに代わる効果的な待遇向上の手段であるとともに、優秀な人材の確保・定着にも幅広く貢献します。アウトソーシングサービスを活用すれば、自社での運営の手間を軽減しながら、充実した制度を提供することも可能です。
どんな福利厚生を導入すればよいかは、以下の記事が参考になります。特に人気ランキングでは、若手やベテラン社員といった年代別のランキングもまとめているので、自社の現状に合った福利厚生の種類を選ぶ際に役立つでしょう。
▶人気の福利厚生制度ランキングについては以下の記事もご参照ください
▶福利厚生の種類については以下の記事もご参照ください
【年代・男女別】離職防止に効果的な対策
離職の理由は、年代や性別によっても傾向が異なります。
以下の表は、厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」をもとに、年代別・男女別の主な離職理由と効果的な離職防止対策をまとめたものです。自社の従業員構成に応じた対策選びの参考にしてください。
■【男性】年代別の主な離職理由
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| 主な離職理由 | 効果的な離職防止対策 | |
|---|---|---|
| 20代 | 給料等収入が少なかった | 人事評価制度・労働条件の見直し ワークライフバランスを考慮した制度導入 社内コミュニケーション活性化 など |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | ||
| 職場の人間関係が好ましくなかった | ||
| 30代 | 会社の将来が不安だった | 人事評価制度・労働条件の見直し ワークライフバランスを考慮した制度導入 福利厚生の充実 など |
| 給料等収入が少なかった | ||
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | ||
| 40代 | 職場の人間関係が好ましくなかった | 社内コミュニケーション活性化 人事評価制度・労働条件の見直し キャリアアップ支援 など |
| 給料等収入が少なかった | ||
| 会社の将来が不安だった | ||
| 50代 | 給料等収入が少なかった | 人事評価制度・労働条件の見直し 社内コミュニケーション活性化 ワークライフバランスを考慮した制度導入 など |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | ||
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | ||
| 60代以上 | 職場の人間関係が好ましくなかった | 社内コミュニケーション活性化 人事評価制度・労働条件の見直し キャリアアップ支援 など |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | ||
| 会社の将来が不安だった |
※「主な離職理由」は厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」をもとに作成(「その他の個人的理由」をのぞいた「個人的理由」から各年代の割合が多かったものを紹介)
■【女性】年代別の主な離職理由
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| 主な離職理由 | 効果的な離職防止対策 | |
|---|---|---|
| 20代 | 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 人事評価制度・労働条件の見直し 社内コミュニケーション活性化 ワークライフバランスを考慮した制度導入 など |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | ||
| 給料等収入が少なかった | ||
| 30代 | 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 人事評価制度・労働条件の見直し 社内コミュニケーション活性化 ワークライフバランスを考慮した制度導入 など |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | ||
| 給料等収入が少なかった | ||
| 40代 | 給料等収入が少なかった | 人事評価制度・労働条件の見直し ワークライフバランスを考慮した制度導入 社内コミュニケーション活性化 など |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | ||
| 職場の人間関係が好ましくなかった | ||
| 50代 | 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 人事評価制度・労働条件の見直し 社内コミュニケーション活性化 ワークライフバランスを考慮した制度導入 など |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | ||
| 給料等収入が少なかった | ||
| 60代以上 | 職場の人間関係が好ましくなかった | 社内コミュニケーション活性化 人事評価制度・労働条件の見直し ワークライフバランスを考慮した制度導入 など |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | ||
| 給料等収入が少なかった |
※「主な離職理由」は厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」をもとに作成(「その他の個人的理由」をのぞいた「個人的理由」から各年代の割合が多かったものを紹介)
まとめ
- 社員の離職には、労働条件・人間関係・ハラスメント・将来への不安など複数の原因があり、対策を怠ると人材流出やコスト損失、企業イメージ低下といったリスクを招く
- 離職防止には、1on1やヒアリングによる現状把握を起点に、人事評価制度、労働条件の見直し、ハラスメント対策など、原因に応じた打ち手を講じることが有効
- キャリア支援や社内コミュニケーションの活性化、柔軟な働き方の支援、福利厚生の充実など、社員が長く安心して働ける環境づくりも、持続的な人材定着につながる
税理士登録後、税理士法人V-Spiritsグループの創設メンバーとして参画。著書に『はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 ’22~’23年版』(成美堂出版)がある。